kintoneとは何者か 〜中小企業DXのために理解すべきこと〜
社内のDXの一環でサイボウズ社のkintoneが導入されました。
誰でも簡単にアプリを作れる「ノーコード」の開発プラットフォームとして注目されているkintoneですが、
結論から言って、「誰にでも簡単に作れる」というものではないと私は思います。
つまり、
「これさえ導入すれば何とかなる!DXだ!」
なんてことはありません。
誤解のないように強調させていただきますが、
「kintoneは優れたシステム」
であることには疑いの余地なく、
私も積極的に社内の業務効率化などに活用したく、有料の研修を受けています。
kintoneとは何者か、
その前に私は何者なのか、と思われた方は、以下の記事で私が社内でどういう立場の者かご理解いただけると思います。
https://matsublog2021.hatenablog.com/entry/2021/06/25/220524
端的には、前職が上場企業のSEだったので、現職はエンジニア職でないにも関わらず、社内SEの真似事をしている者です。
今回はそんな私が社内でkintone導入を進めるにあたって感じたことを、実体験を交えて記したいと思います。
kintone導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
なお、改めて強調します。
- kintoneは優れたシステム
- ITリテラシーが高くない中小企業の味方
kintoneとは?
簡単に言うと、プログラミングなしでソフトが作れるソフト=開発プラットフォームです。
「ノーコード開発」ていうカテゴリーに入ります。
プログラミングってアルファベットとか数字いっぱい並んでるイメージありますよね。
この暗号みたいな文字群を書かずにソフトウェアを作れるってことです。
なぜ、そういうことができるのか?
プログラミングでよく使う部品みたいなのをいっぱい用意してくれていて、それらを組み合わせるだけで、ソフトが出来るってことです。
プラットフォームはスーパーマーケット
私は開発プラットフォームとはスーパーマーケットのようなものだと考えています。
品揃えの良さや食品の鮮度、お惣菜の充実度など、スーパーによって特徴は様々です。
今日はお肉食べたいなーと思ったら、お肉の安いスーパーに行ったり、お惣菜で済ませようと思ったら、お惣菜が人気のスーパーに行くなど、要件に応じてスーパーを選びます。
身近な例では、表計算ソフト作りたいならExcelを使い、文書作成ならWordでやります、みたいなことです。
kintoneは○○
私はkintoneはCostocoみたいな巨大スーパーだと考えてます。
スーパーには色んな食材がありますが、
特にこのkintoneスーパーには料理下手な人でも美味しく作れるように下味付けてくれてるものや切ってくれてるものがたくさん陳列されています。
そのため、あとは焼くだけで美味しいご飯が出来ますよっていうくらい便利なのがkintoneの良さです。
kintoneさえあれば何でも出来る、
はウソではなく、非常に多くの種類の料理が作れる環境がkintoneにはあります。
そのため、誰でも料理人=開発者になれるので、どんどん料理を作ろう!なんて気分になります。
料理当番を決めよう
誰でも簡単に料理を作れる、は大きな魅力ですが、一方で、当番を決めておかないと料理で机の上がすぐにいっぱいになります。
同じ料理をそれぞれ別の人が作ったり、食べ合わせの悪い組み合わせで料理が出来てしまったり、メイン料理の前にアイスクリームが出てきたり、献立がぐちゃぐちゃになります。
その食卓に座る人=従業員またはオペレーターの人は、
何から食べたらいいのか、
こんなにも食べられない、
さっきも似たようなの食べたなー、
と不満を持ってしまいます。
従業員の業務効率化で喜んでもらうためのkintoneが逆効果となってしまいかねません。
そのため、私は当番をハッキリ決めておくべきだと思います。
お肉料理担当の料理人、
お魚料理担当、前菜担当、デザート担当・・・
各カテゴリ=業務内容別に担当分けして、
料理=アプリは誰が作るのか、
区分けしておけば、焼き魚と煮魚が同時に食卓に並ぶことはないでしょう。
そして献立全体のバランスをみるチーフシェフみたいな人がいれば、料理を出す順番とか、それぞれの量も調整できて、食べる人のことを考えた献立になります。
実体験、中小企業失敗例
私の職場にもkintoneが導入されました。
kintoneさえあれば何でも出来る!
それが経営陣の心を掴み、導入に反対意見は出ませんでした。
しかし、何を作るのか。
誰が作るのか。
献立も料理人も決まっていません。
何でも作れるから、とりあえずkintoneスーパーに行きましたが、各人がウロウロ闊歩するだけで、カートに食材をなかなか取りません。
一方では、面白がってどんどん買って料理を作る人たちもいます。
ウチの会社では顧客管理のソフトを3人くらいが別々で作っていました。
ビーフカレーとチキンカレーと夏野菜カレーが食卓に並んだ感じです。
また見積を作るソフトを作る人もいましたが先ほどの顧客管理のソフトとは全く連携しておらず、どの顧客に見積を出したかを顧客管理ソフトに反映はできません。
つまり、十分に便利なものではありません。
度々、
ソフトは使う人のためのものなので、現場からの要件のヒアリングや全体設計、運用ルールを決めましょう、
と訴求しましたが、
何でも出来るんだから大丈夫!
という謎の自信で却下され、いまだkintoneを使いこなせていない状態です。
悪しき心の持ち主は筋斗雲に乗れないように、
ITリテラシーが低過ぎるとkintoneは乗りこなせないのです。
導入成功のために
私は導入を成功させるためには、社内からITリテラシーが高いメンバーを選抜して、旗振り役にすべきだったと思います。
あるいは、社内に適切な人材がいないなら、kintoneの販売店や中小企業診断士、ITコーディネーターなどに相談するのがいいと思います。
繰り返し強調しますが、
kintoneは優れたシステムです。
ただし、キッチンが高価なものだからといって美味しい料理ができるわけでないのと同様に、システムの価値を引き出すのは使い手です。
自動運転技術が進歩しても、無免許の人を運転席に座らせたくないですよね?
いざというときにはハンドルを切らないといけないかもしれないので、せめてペーパードライバーでもいいから免許保持者に座ってて欲しいし、欲を言えばタクシードライバーとか運転のプロに座っててもらえればより安心です。
kintoneは、ペーパードライバーがプロドライバーと同じような運転が出来るようなシステムではなく、ペーパードライバーよりプロドライバー、プログラミング素人よりプログラミング経験者の方が使いこなせるシステムです。